「AI for Science」の起源と日本の政策への浸透

国際的な文脈での登場

「AI for Science」というフレーズ自体は、AlphaFold(2018年)を先駆けとして、AIを科学研究に活用する動きが広がる中で使われるようになった用語です。学術コミュニティとしては、NeurIPS 2021で第1回「AI for Science」ワークショップが開催され、以降ICML 2022、NeurIPS 2022…と継続的にシリーズ化されています。つまり、フレーズとしての「AI for Science」が学術界で明示的に使われ始めたのは2021年頃です。

日本の政策文書への登場時系列

2022年(AI戦略2022):この段階では、「物理・化学や機械など、日本が強みを有する分野とAIの融合」という文脈で語られていましたが、「AI for Science」というフレーズそのものはまだ前面に出ていません。AI戦略2022は2022年4月に策定されています。

2023年:ここが大きな転換点です。政府広報でも「AI for Science」を推進していることが紹介され、2023年11月21日時点のURLが参照されていることから、2023年後半には政策用語として定着し始めていたと見られます。AI戦略会議が2023年5月に立ち上がり、生成AIの急速な進展を受けて議論が加速しました。

2024年:一気に本格化します。2024年4月にはAI for Scienceの日米連携枠組みが創設され、理化学研究所において科学研究向けAI基盤モデルの開発・共用(TRIP-AGIS)が2024年4月に開始されました。令和6年版科学技術・イノベーション白書(2024年)では、第4章の章立てとして「AIの多様な研究分野での活用が切り拓く新たな科学」が設けられ、第1節のタイトルが「多様な科学分野における高度なAIの活用(AI for Science)」と明記されています。ここで政策文書の中核的なキーワードとして完全に定着しました。

2025年:AI戦略会議の資料で「医療、創薬、マテリアル等の分野で日本の強みを活かし、AI for Scienceを加速」と明記され、文部科学省の情報委員会(2025年10月)では「AI for Science の推進に向けた基本的な考え方について」が議論されています。令和7年度補正予算には「AI for Scienceによる科学研究革新プログラム」が新規事業として計上されました。2025年12月23日に閣議決定された初の「人工知能基本計画」にも「AI for Scienceの取組を推進する」と明記されています。

2026年:第7期科学技術・イノベーション基本計画(答申素案)では「AI for Scienceによる科学研究の革新」が独立した節として設けられ、もはや政策の柱の一つとなっています。文科省ではAI for Science推進委員会が2026年2月に第1回を開催。政府広報のテレビ番組「クリックニッポン」でも特集されるなど、一般国民向けの広報にまで浸透しています。

まとめ

時系列的に見ると、「Transformerがアミノ酸配列に使えた→AI for Science」という技術的な流れが背景にあり、2020年代の生成AIの普及を契機として世界的な潮流となったものです。日本の政策文書への登場は2023年頃から始まり、2024年の科技白書で本格的に位置づけられ、2025年以降は予算事業名や基本計画にまで組み込まれて急増した、という流れです。

Claude Opus 4.6